チャーリー・マフィン、再登場

ブライアン・フリーマントルのチャーリー・マフィン・シリーズ16作目、Red Star (第1作Rising, 第2作Eclipse)三部作の最後Red Star Falling(2013)の翻訳『魂をなくした男』(上下巻、新潮文庫)がやっと出ました。このブログでもふれていたように原作はKindleで手に入れつつ、人物関係が錯綜しているので、途中で断念しました。16作の内Comrade Charlie (1989)未訳ですが、確認すると知らなかった番外の短編集Charlie's Choice: The First Charlie Muffin Omnibus (1997)はあり、これも未訳。『同志チャーリー』はKindleで購入し未読。短編集も買ってみようかと。
 窓際族に見えて実は敏腕スパイ・チャーリーが冷戦終了後の世界でどのように生き抜くかについて興味を持ってみていました。実は第1作目『消されかけた男』(Charlie Muffin,1977)から身内の情報部から殺されそうになる四面楚歌のぎりぎりのスパイでした。冷戦終了後のスパイ小説の行く末が心配されましたが、少なくともチャーリー・マフィンについては、国家対国家の物語ではなく、組織の中でいかに生きて行くかを語る物語なので、大丈夫でした。冷戦後の第9作『報復』(Charlie’s Apprentice Muffin,1993)では新人部員の教育係を命じられます。そしてその新人が共産主義国家の中国で危機に陥ったのを救出する物語になります。
 つまり冷戦が終了しても、国家間の争いはなくならず、もともとイギリスの情報部内の確執、そして同盟国アメリカとの競争、ソ連崩壊後のロシアの保安局・情報局やロシア・マフィアなどの外部の敵にも事欠かず、さらにはソ連時代からの恋人・妻であるナタリアと娘の問題の解決など、物語のネタはたくさんあるんですね。そしてRed Star 三部作の最後は、第2作の最後でモスクワの空港でイギリス情報部員に撃たれたチャーリーが病院で目覚め、ナタリアと娘はイギリスに身柄を確保されていると言う状態からスタートします。さてどうなるか、週末のたのしみです。