『マッドメン』と落ちる男

エミー賞で2008年から3年連続のドラマシリーズ部門作品賞受賞、ゴールデングローブ賞でも3年連続のドラマシリーズ部門作品賞を受賞している『マッドメン』のオープニング・タイトルで、ビルから落ちていく男がアニメーションで描かれる。 そして宣伝用の看板にも、"落下する男"が出演している。シーズン5から『マッドメン』の看板は ニューヨークの地下鉄やバスなど、さまざまな場所で見られるようになった。巨大な看板がビルの壁面に登場すると、世界貿易センターから落ちる犠牲者をイメージすると、 9.11テロの犠牲者の家族から非難を受けました。製作者側は「主人公のドンが落ちていく映像は、 2007年に『マッドメン』が始まった時から使っていて、これは混乱の中にいるドンの精神状態を描いているフィクションであり、現実の出来事との関連はない」と声明を出している。しかし、僕はシーズン1から使われているこの冒頭のアニメは、センスがいいけれど問題になると思って見ていました。そんな大事件を連想させるイメージをよく使ったなと。
 さて、ドラマ自体は面白い。舞台は1960年代のニューヨーク・マンハッタンのマディソン・アヴェニューにある大手広告代理店。タイトルの「マッドメン」(Mad Men)は、現在も大手広告代理店が多いマディソン・アヴェュー(Madison Avenue)の広告マンを指す造語ですが、「仕事や不倫に夢中になっている、無分別な」男たちを意味してもいるような。このドラマでは、1960年代のアメリカの社会や風俗を再現していますが、社内での飲酒・喫煙や、セクシャル・ハラスメント間違いなしの言動は当時のアメリカで普通だったのか、この業界の特殊な事情なのか疑問の部分もあります。
 時代設定は厳密には、ニクソンケネディの選挙から始まっているので、1960〜61年。という事はまだ、ベトナム戦争が激化していず、ヒッピー・ムーブメントも登場していない。ドンの愛人の仲間がビートニクのような時代です。でも話が進んでいくと、ケネディが当選して、公民権運動が進展し、ドンの部下が黒人女性を恋人にして、フリーダム・ライダーに参加していくようになっていきます。そのあたり、60年代の社会背景や風俗がきちんと描かれていて興味深いです。だいぶ前にN君に進められて購入し未見だったが、正月のマイ・ブームで面白さを発見し、シリーズ3〜5も研究費で発注しました。