『殺人者』と『殺人者たち』

 ロバート・シオドマクの『殺人者』(1946)と、ドン・シーゲルの『殺人者たち』(1964)を再見。ヘミングウェイの原作”The Killers”は7頁の短編。シオドマクの『殺人者』の方はフィルム・ノワール的なモノクロの光と影のコントラストが際立つものだった。シーゲルの『殺人者たち』の方は、TV用に製作されたらしい、テンポのいいアクション映画。原作では殺し屋に従容として殺されるニックの同僚について、2作ともなぜ逃げないで殺されたかを探る物語にしている。『殺人者』の方は原作通り元ボクサーの主人公(33歳のバート・ランカスターのデビュー作)が、ファム・ファタールエヴァ・ガードナー)に導かれて非業の運命を辿る。『殺人者たち』の方は、元レーサー(ジョン・カサべテス)が、魅力的な女性(アンジ―・ディキンソンなので、「運命の女」とまでは言えない)に騙されて、強盗したか金を首謀者から盗もうとして、女と主犯(ロナルド・レーガン)に撃たれて逃亡する。
 ただ『殺人者』の方は、冒頭2人の殺し屋がニックが食事をしているダイナーにやって来て、元ボクサーについて尋ね、殺すところまでは、ほぼ原作通り。その後、保険会社の調査員(エンドモンド・オブライエン)がその死の原因を探る中で、元ボクサーの関わった女性と強盗事件に解決に辿りつく。『殺人者たち』の方は、元レーサーを殺した殺し屋が、なぜ逃げないで殺されたかを知ろうとする中で、強盗事件の首謀者に辿りつく話になる。
2作を見て一番印象的なのは、やはり『殺人者たち』のリー・マーヴィン。彼のドスの聞いた声、そして軽快な動きが素晴らしい。僕は俳優の魅力を声と身体性で評価するのですが、例えばカバンを閉じて、歩いて部屋を出ると言う場面での動きだけでも何か違うような気がする。