スコットランドのはみ出し警部

 イアン・ランキンの『死者の名を読み上げよ』(早川書房、ポケット・ミステリ)が出た。スコットランド生まれのランキンは1987年エジンバラ市を舞台に、リーヴァス警部を主人公とする『紐と十字架』を発表する。
 その後1997年の『黒と青』でイギリス推理作家協会(CWA)賞のゴールド・ダガー賞を、2004年にも『甦る男』でアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞の最優秀長編賞を受賞しています。
 このバツ一で掟破りの独走型は、キャサリン・ビグロー監督作品の主人公にも通じるが、それはある種のハードボイルド・ヒーローの原型かも知れない。社会のルールよりも自分行き方を優先し、それがもたらすトラブルは従容として引き受ける。
 このリーバス警部ものはいずれもスコットランドの政治が色濃く背景としてあり、ランキンが元ミュージシャンだった事もありってロックの話題も豊富で、しかも熱い。そして厚い。いつもポケミスで500頁前後もあって読みごたえがあります。
1995年の7作目『血の流れるままに』はストーンズの1969年のアルバム・タイトルを引用したもので、そのアルバムはブライアン・ジョーンズ在籍最後の作品で、レオン・ラッセルライ・クーダー共演というロック・ファンなら聞き逃せないものです。