北欧の刑事たち

2014年のベスト・ミステリー10などを選ぶ気力と読書量はありませんが、強く印象に残った1冊は『特捜部Q 知りすぎたマルコ』でした。最近北欧ミステリーがブームの様ですが、50年前にはスウェ―デンのストックホルム警視庁の刑事マルティン・ベック・シリーズが有名でしかも面白かったので、20代の時に全作読みました。ペール・ヴァールー(夫)とマイ・シューヴァル(妻)による合作第1作『ロゼアンナ』が1965年、第4作の『笑う警官』(1968)はエドガー賞 長編賞を受け、『マシンガンパニック 』(1973)として映画化されました。ウオルター・マッソー主演のその映画はあまり・・・そして1975年最終作『テロリスト』を完成させますが、福祉国家の様々な問題を描いた小説としても評価されました。
そして1990年代に同じスウェーデンの作家ヘニング・マンケルによる1991年『殺人者の顔』でスタートした刑事クルト・ヴァランダーのシリーズが世界的に読まれるようになります。日本での翻訳は10年後の2001年。マルティン・ベックとの違いは、国際化した社会の変貌を受けて、カリブ海やアフリカからの移民の問題が繰り返し描かれます。そしてDVによる被害者の女性が加害者となるテーマも。このテーマは同じスウェーデンスティーグ・ラーソンによる『ミレニアム』シリーズ(2005〜07)でも重要です。僕は2012年から読み始めましたが、9刷なのでかなり売れている。因みに年末にWOWOW でみたソダーバーグのSide Effectで鬱病を装って金儲けを計ろうとする主人公を演じる女優は『ミレニアム1』を映画化した『ドラゴン・タトゥーの女』(2011)でタイトル・ロールを演じたルーニー・マーラでした。
そして今回のテーマである、デンマークの作家ユッシ・エーズラ・オールスンによる『特捜部Q』シリーズ(2007〜)も面白い。日本初紹介が『特捜部Q―檻の中の女―』(2011)。主人公のカール・マーク警部は特捜部という窓際に追いやられたはぐれ刑事で、正体不明の相棒がシリア人アサド。その扱われる犯罪は宗教・性暴力・人種差別・エリートの暴走と必ずしも国際的ではないけれど、奇人の相棒が時おり明かすアラブ世界での過去がデンマークも犯罪のグローバル化と無縁ではない事が示しています。北欧のミステリーって人の名前が頭に入ってこないので苦しいけれど、紹介されているのはどれも面白い。