シンポジウムのミニ報告

 日曜日のシンポジウムのタイトル「あめりか・いきものがたり」は説明を受けないと少し分かりずらい。ゆっくりと行ったので司会者のその辺りの説明を聴き逃したけれど、たぶん「生き物」+「物語」だろうと思います。文学における「他者」を人間から動物へ敷衍するのはそれほどとっぴではない。
 ペットやそれ以外の動物の表象、そしてその意味の解釈から、その統合などへのベクトルは面白いけれど特に新機軸という訳ではない。トップバッターのF先生はメルヴィルの専門家らしいのだけれど、『白鯨』ではなく、その他の作品の動物表象から人種問題、植民地政策そして動物愛護のイデオロギーと、動物と人間との関係を話された。
 2番手の司会兼務のT先生はK・ショパンの作品『目覚め』から女主人公の妊娠=動物性を肯定的にとらえ、動物と人間との境界を超えた視点で脱もしくは超フェミニズム的文学論とも言えるか。
 3番手のT先生はマーク・トウェインの作品を取り上げ、人間への批判的な視点としての犬を取りあげて面白かった。アメリカ版『吾輩は猫である』といったところだろうか。トウェインは同時代人のダーウィンとも会った事があるそうだけれど、人間を最下等の動物とするシニシズムは当時最先端であったダーウィニズムとはある点では相容れなかったようだ。
 さて講師最後のS先生はピンチョンの諸作品から、人間対動物という視点に有機物対無機物という視点をも取り込んで、人間が作り上げたシステムを脱構築していくという具合にピンチョンの戦略を解説する。
 実はテーマの設定そのものよりも、各講師のアプローチがそれぞれ専門分野の学識と、それをテーマにそってアレンジする柔軟さ、そしてオーディエンスに分かりやすく語る明快で知的なレトリックに感心しました。女性・男性各2名、そして年齢も恐らく、60代〜30代のベテラン・・中堅・若手ととてもバランスが良かった。僕が退室した後の2名のコメンテータの話は聞き逃したが、壇上に計6名は少し多すぎるような。
 今回は会場の案内もそうだけれど、シンポジウム会場でのレジュメの配布が遅れたりして、少し会場校としての運営に疑問を持ちました。帰宅して北海道の支部長から全国大会の開催が2014年に決まったと知らされ、そろそろ準備の準備をしなければとも。そう言えば中部支部のNさんがシンポジウム会場の写真を撮っていたのが不思議でしたが、来年の開催支部と後からきいて納得?しました。