辺境に住む

何年か前にH先生が支部大会で講演をした時に、北海道とアメリカの親和性について触れました。函館に生まれた先生は事の他北海道に愛着を示され、ミステリ作家でもあるので、札幌を舞台にした作品も書かれました。北海道とアメリカの親和性とは、ともに本州とイギリスの外地であり、伝統や柵(しがらみ)がなくなく、自由であるという事でしょう。北海道にいてアメリカ文学を研究する者としては、そこに利点があるとも言えます。身を以てその外地性を経験しているのですから。
 では北海道とカナダはどうか。月末に開催される支部大会では講演とシンポジウムで、カナダ文学またはアメリカ文学との関係におけるカナダ文学を扱います。またここでも、北海道とカナダの親和性に気付く。今度はアメリカが中心で、カナダが辺境と言う事になります。しかも遠いイギリスとアメリカよりも、アメリカと国土を接するカナダの方が、北海道との共通点は多いかも知れません。
 それと辺境から中心を見る視点の相対性と客観性もまた文化を考察する重要なモメントかも。前にも言ったような気がしますが、研究者としても中央とは遠く離れた場所から研究の動向を眺める心地良さも感じます。ま、どうせ研究の先端にいるのではないからマイペースで進める。停滞、後退するかもしれないけれど、年のせいもあってあまり気にしなくなりました。