「ロッカー」が6冠?!

 キャサリン・ビグローの『ハート・ロッカー』がアカデミー賞で6冠を制覇したらしい。そのせいか今朝の「シネマ・ユナイテッド」の上映館は8割の入りでした。朝一で1,200円。2回目にもずいぶんと人が詰めかけていました。平日なのにこんなに混むのは珍しい。アカデミー賞の威力おそるべし。僕としては受賞前から今日観る予定でいたので少し迷惑でした。でも映画好きの団塊の世代が映画館に戻ってきて心強い部分もある。
 映画はけっこう重い。『ハートブルー』のサーフィン・シーンにおける官能的な波や『ブルー・スティール』における青光りする銃の耽美的な映像を期待したのですが。
 イラクにおける爆弾処理班の静かな緊迫した場面が多い。主人公のジェームズ軍曹は命知らずの爆弾処理のリーダー。これはハートブルー』の刑事、『ブルー・スティール』の警官と同様職務に伴う暴力と危険に魅せられてしまうという意味では共通するかも。でも爆発する時の地面の持ちあがる場面、爆発の後の火の場面のスローモーションにビグローの映像美を見た。
 仲間を危険にさらすジェームズは、帰国しても幸せな家庭生活になじまず、志願して戦場に戻ってしまう。これはPTSDではなく、死と隣り合わせの戦場の高揚が忘れられない、危険フェチだろうか。
 そのジェームズが一人テロリストを追ってアラブ人の町に入った時の孤独・恐怖は、アメリカ人がイラクにもたらしたものであるという視点がビグローには欠けているような気がする。でのりドリー・スコットの『ブラックホーク・ダウン』でソマリアに落ちたパイロットを襲うソマリア人をゾンビのように描くのとは少し違うかも知れないけれども。
 因みに"Hurt Locker"("Heart Rocker"ではありません)は「行きたくない場所」、「やばい場所」、「棺桶」のスラングらしいです。
 ビグロー監督撮影中の雄姿。