ボンドとブレヒト

 WOWWOWでボンド・シリーズを放映しています。シリーズの全体を見て比較できるの面白い。やっぱりジェームズ・ボンドショーン・コネリーですね。中学時代に2番館でみた事を鮮明に覚えています。多感?な頃だったので、ボンド・ガールに惹かれた事も否めません。
 コネリーの長い眉、大きな口がユーモアと冷酷さを表現していてボンド役はこの人だという思いを強くしています。ダーク・スーツもよく似合う。タキシードが似合う事も重要だけれど、普通のスーツが地味だけれど(ロンドンのサヴィル・ローでの)仕立てがよく、またそれがよく似合う厚みとたっぱの程よい体型なのですね。
 シリーズの中では、特に『ロシアより愛をこめて』は敵役、ボンド・ガール、脇役、演出、音楽も含めてシリーズ最高の作品ではないでしょうか。
 敵役の元ソ連情報局内部の組織スメルシュ(敵のスパイ暗殺を目的とする実在の組織らしいのですが、映画ではスぺクターとなっていました)のローザ・クレッブ大佐をロッテ・レーニャが憎々しげに演じています。オーストリア・ドイツのダンス・シーン、ミュージカルで活躍し、ブレヒトが台本を書いた『三文オペラ』で主役の匕首マッキー(マック・ザ・ナイフ)の愛人の一人ジェニー・タイヴァを演じ、作者のクルト・ワイルと結婚した人です。
 クレッブ大佐の部下で殺し屋のグラントもいい。演じるのはイギリスのロバート・ショー。体格のいい、下品で酷薄な殺し屋役のショーは『わが命つきるとも』で主人公のトマス・モアに死刑を命じるヘンリー8世、『スティング』でポール・ニューマンとレッドフォードのコンマン(詐欺師)に騙されるギャングのボス、『ジョーズ』で漁師を演じて有名ですが、作家としても評価されているようです。
 囮としてボンドに近づくタチアナ・ロマノヴァを演ずるダニエラ・ビアンキも実際はイタリア人なのですが、ロシアのクール・ビューティを演じて、ボンド・ガールの中でも人気があるようです。
 舞台もロンドンからイスタンブールオリエント急行、そして最後はベニスでエンド・マークを迎える観光地映画でもあるんですね。
 スティングが「マック・ザ・ナイフ」を歌うクルト・ワイル曲集『ロスト・イン・ザ・スター』