publicの意味

イシャーウッドの項でプレパラトリー・スクールが出てきました。preparatory schoolは日本語で「予備校」と訳された事も多いですが、それだと大学その他の学校進学のための受験生のための予備校の意味になってしまう。preparatory schoolは、イギリスではpublic school(中等教育機関)に進学する「準備の」のための私立小学校、アメリカにおいては大学に進学する「準備の」のための私立ハイスクール(イギリスのpublic schoolに近い)を指す事は最近知られてきています。略称の「プレップ」は、「プレッピー」に変化して、名門私立学校に通うお金持ちのお坊ちゃん、または彼らのファッション用語としても使われます。日本でも流行ったアイビー・ルックを新しくしたものです。もちろん『ライ麦畑』のホールデン・コールフィールドのいたペンシー校もプレップ・スクールでしたね。
 またイギリスのpublic schoolの方は、前述のように「公立の」という意味ではなく、「公共の」という意味です。この「公共」という言葉が「私 (private) や個 (individual) に対置される概念で、英語のパブリック (public) を翻訳した言葉」である事は初めて知りました。そしてこの公共性は「一般の人々にかかわる」と「政府や国の」の意味があり、それがpublic schoolの英米の違いと関係してくるのでしょう。
さてイギリスのpublic schoolのpublic に話を戻すと、なぜわざわざ「一般の人に開かれた」と形容詞を付けるかというと、もともと学校の入学には親の宗教・職業・身分に制限があって「一般の人に開かれていない」からです。例えば、中世の学校は教会か職人組合(ギルド)に付属していて、僧侶や職人育成が目的でした。貴族はいうと、家庭教師を雇ってお屋敷で子供の教育をしていました。しかしジェントリーを含む新興の富裕層および中間層の誕生と共に、身分に関係ない「一般の人に開かれた」学校が必要となってきたので、イートン校・ハーロー校のような全寮制の私立学校が誕生したのでした。