ゾーイーかズーイ(−)か?

ずっと 『フラニーとゾーイー』だと思い込んでいた。1961年のJ・D・サリンジャーが発表したFranny and Zooeyは、1955年のFrannyと1957年のZooeyの連作小説を1つにまとめたものである事は周知の事です。僕は新潮文庫野崎孝訳の『フラニーとゾーイー』(1976年)からZooeyを知ったので、ずっと「ゾーイー」でした。後から荒地出版社の『サリンジャー選集』をそろえた時も、『フラニー/ズーイー』( 原田敬一訳)も1993年の新装版でしたが、初版が1968年なので、「ズーイー」版が先だったんですね。しかも1979年の講談社文庫も『フラニー/ズーイー』(高村勝治訳)で、今度の村上春樹訳の『フラニーとズーイ』は野崎訳と同じ新潮文庫なので、「ゾーイー」はほぼ駆逐されたように見えます。
 でもZooeyは[zoʊi]なので、「ゾーイー」なのではないでしょうか。派生語のzoo(動物園)の発音の類推なのでしょうか。Zooey Deschanelというアメリカの女性歌手・女優もズーイー・クレア・デシャネルと表記されますが、
英語での発音は「ゾウイー」(/ˈzoʊi/)で、「ゾーイ」とも表記されるとあります。しかも彼女の名前はサリンジャーのFranny and Zooeyの登場人物に由来するとされています。日本の芸能ジャーナリズムはちゃんとした表記のルールを持っていないので、多数派の「ズーイー」になびいたのでしょう。