盗まれた街

ジャック・フィニイの『盗まれた街』(1955年)を原作とする映画『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』(Invasion of the Body Snatchers , 1956年)を初めてみました。監督のドン・シーゲルは好きなのですが、エイリアン物というジャンルは好きでないので遠ざけていました。しかし、この作品はフィルム・ノワールとの関わりでも語られる事が多いのでそのうち観ようと思っていたのですが、昨日というか今朝方スター・チャンネルでみました。
 病院に1人の男が錯乱状態で搬送されて来て、その男マイルズは医師に対して、自分が遭遇した奇妙な出来事を語り始めます。カリフォルニア州のとある小さな町で医者をしているマイルズは、学会から帰ってきた時、町の人々の様子がおかしい事に気付きます。調べ始めたマイルズは、町が宇宙から来た未知の生命体によって肉体を乗っ取られてしまっていました。マイルズはこの事実を知らせようとして、恋人のベッキーと共に町から脱出しようとします。
 このエイリアンは、冷戦中のアメリカにとって、共産主義とも、またはその逆に終わったばかりの赤狩りをも連想させます。主人公の不安と、モノクロの光と影のコントラストを強烈に意識させる映像、テンポのいい場面転換等が
フィルム・ノワール的と言えるのでしょうね。
主人公のケヴィン・マッカーシーメアリー・マッカーシーの弟です。彼女については稿を改めて。その後3度もリメイクされていて、1978年版『SF/ボディ・スナッチャー』(Invasion of the Body Snatchers)は、『ライトスタッフ』 、『存在の耐えられない軽さ 』のフィリップ・カウフマン監督で、ドナルド・サザーランドとブルック・アダムズ主演です。1993年版は『ボディ・スナッチャーズ』(Body Snatchers)は、『バッド・ルーテナント』、『フューネラル』のアベルフェラーラ監督。2007年版『インベージョン』(Invasion)は、『ヒトラー 〜最期の12日間〜』のオリヴァー・ヒルシュビーゲル監督(ドイツ人)で、主演はニコール・キッドマンダニエル・クレイグ
翻訳のタイトルや、映画の邦題って今一の場合が多いけれど、この作品に関しては「盗まれた町」がいいです。翻訳をしたSF作家の福島正実さんのセンスでしょうか。他のフィニイ作品タイトルもいいです。