黒人探偵

 前項でふれた黒人探偵デレク・ストレンジについて。
 1作目の『曇りなき正義』ではストレンジは黒人警察官が射殺された事件をめぐる再調査を被害者の母親から依頼される。黒人男性が白人男性を路上に組み伏せて銃を向けているところへ、警官が行きかかりやむを得ず発砲する。この発砲した警察官テリー・クインはアイルランド系白人で被害者が黒人でなかったら発砲したか悩む人種問題がらみの作品です。こ最後には被害者の黒人青年(非番の警察官だった)の容疑も晴れ、クインは2作目以降ストレンジの探偵事務所の調査員になる。

 2作目の『終わりなき孤独』を経てシリーズ第3作にあたる『魂よ眠れ』は、ロサンゼルス・タイムズ・ブック・アワードの最優秀賞を獲得。4作目の『変わらぬ哀しみは』はぐっと時代が遡って21歳の少年デレクが10年後警官として働いている時期までの物語です。1968年という公民権運動の時代とキング牧師の活躍と暗殺が重要な時代背景として描かれます。僕たちは映像で白人警官が黒人デモ隊を警棒や放水で排除する暴力的な現実を知っていますが、そのような時代に黒人警官でいる事が、黒人・白人の両方から嫌われてしまうような状態を引き起こし、ストレンジは正義を実現しようとして苦闘する。そんな真っ当な話が、ペレケーノス得意の音楽(ロックやソウル)も絡めて語られています。
 都市、人種、文化(特に音楽、時に文学と映画)という主題を骨太に描く作家とまとめる事ができそう。