都市と黒人

 アフリカ系アメリカ人の画家はそう多くない。アーロン・ダグラス(1899‐1979)、ジェイコブ・ローレンス(1917‐2000)くらいだろうか。アーロン・ダグラスの絵は、マンハッタンの北ハーレムにある市立図書館の分館ショーンバーグ記念館で見た。どちらもある種のプリミティヴ・アートかフォーク・アートの部類に入るのは、黒人にとってアカデミックな絵の勉強の道は閉ざされていた事を意味するのだろう。しかしそれが却って、どこかアフリカ的とも呼ぶ事のできる作風へとつながっていったのだろう。

 ジェイコブ・ローレンスのMigration(大移住)シリーズは20世紀初頭の黒人の南部から北部・東部への移動を描いた歴史的・社会的な出来事を描いたものだ。都市に移住した黒人たちはゲットーに住み着く。ハーレムでは音楽・詩の朗読などの芸術・文化が花開き、ハーレム・ルネッサンスとして結実する。一方では貧困層がゲットー(ヨーロッパの都市のユダヤ人街を指す言葉だった)に閉じ込められる。

 ローレンスのデフォルメされた構図、シンプルな配色は、土俗的とも言える独特の魅力を持つように思える。