物語るアメリカ絵画

 アメリカ絵画の特徴は抽象画ではなく、具象画・リアリズムの絵だと思う。そしてアメリカ的な大衆文化の中で、コマーシャルな世界で生計を稼ぎながら自分の絵をかく画家が多い。イラストレーターと画家の二足のわらじを履く。その作品もどこかマージナルな趣をもってしまう。
 で、さらに物語を感じさせる、文学的な絵も多い。そういう意味で、分かりやすく、しかもストーリー性を持ち、芸術的でもあるワイエスアメリカでも日本でも人気がある画家だ。ヨーロッパではどのように受け入れられているか気になる。
 ワイエスは都市部よりも、農場を舞台としての連作が多い。セピア色の昆虫の羽根のような繊細なカーテンが風に吹かれている。時間が止まったような、静止画のような、どこかノスタルジックな画風は、見る者の想像力をかきたてる。