アメリカを切り撮る

 スイスに生まれアメリカに移住したロバート・フランクはウォーカー・エヴァンスの影響を受け、第2大戦後の繁栄を謳歌しているはずのアメリカを『アメリカ人』で描いた。それは先輩の眼差しと微妙に異なる異邦人の視線だった。写真集の表紙にも使われているこの作品は星条旗をモチーフにして、アメリカの建前(国旗)と現実(貧しさ)のギャップを表象しているように思える。

 芸術としての写真の完成度から言うとこの作品の方が上なのかもしれないが、これって身も蓋もないよねと思ってしまう。この写真の構図と画質のバランスの良い分かりやすさに対して、あざといと言う言葉が浮かんでしまう。写真の持つざらついた、無機質な特質をうまく使っているが、そのインパクトは一瞬で了解してしまい、その後はそれで・・・となってしまう。エヴァンスの文学性の方が見ていて心地いい。