アメリカを描く

 グラント・ウッド(1891‐1942)はフロンティア消滅時に生まれ、第2次大戦にアメリカが突入した頃に亡くなっているが、「アメリカン・ゴシック」という不気味?な一組の男女(夫婦か親子か兄妹か)を描いた絵で有名だが、田園を幻想的に描いたものやここに紹介する歴史的な題材をやはり幻想的に描いた作品がある。
 この田園のイメージには、「丘の上の町」を目指したピューリタンアングロ・サクソン的なの田園主義、ジェファーソンの農本主義など、基本的には都市と対極にある世界観が通底している。20世紀初頭に都市部の人口が7割を占めるようになっても、アメリカ人はパストラルな風景を好むのだろうか。
 作品は大恐慌の時代に描かれたもの。ヨーロッパではモダニズムの時代だけれど、新大陸では「アメリカン・シーン」と呼ばれるリアリズムの画家たちが活躍した。その中ではベン・シャーンやチャールズ・シーラーなど都会派はモダニズムに通ずる部分もあるが、リージョナリスト(現在の地方分権を唱える人たちではなく)という中西部(アメリカのハートランド)の特徴を描く作家たちは一種の田園主義者であった。
左はThe Midnight Ride of Paul Revere(ポール・リヴィアの深夜の早駆け)、右は Fall Plowing(耕作地の秋)。ポール・リヴィア(画面左下)は独立期のボストン市民で、イギリス軍の襲撃を仲間に知らせるために馬を走らせた。