ヒリヒリする

3月末の学部のイベントの準備の一環として、パトリシア・ハイスミス(1921‐95)の『キャロル』(1952)について考えています。時々『太陽がいっぱい』で有名になった「リプリー・シリーズ」について書いていました。それが1950年代に別名で書いた作品が2015年に『キャロル』として映画化され、また気になっていたんですが。
 で、映画を見て、原作も翻訳で読んでみました。ついでに死後に出た伝記(Beautiful Shadow; a life of Patricia Highsmith)もキンドルで購入。まず原作の方。主人公のテレーズに共感する自分に少し驚いています。自分の同性愛的志向に気づくテレーズの言動に一喜一憂する64歳の日本の男性読者。主人公と同じように?、新しい恋人(キャロル)や元の恋人(リチャード)の間で混乱するテレーズにヒリヒリする。たぶん異性愛でも同性愛でも、相手の気持ちを推測したり、自分の出方を考えたりと言った恋愛の基本的なあり方は同じで、それを人種もせいも年齢も異なる読者に追体験させるような小説の力なのだと思います。
小説の力の一つとして、まず1950年代のニューヨークの風俗がきちんと描かれている事。ハイスミスがアルバイトをしていたブルーミングデールをモデルとしたデパートの職場の雰囲気。職員食堂、先輩社員との関係。自分や友達のアパートの佇まい。舞台美術を志望するテレーザの演劇関係者の交渉やパーティの様子など過不足なく描かれています。いつもストーリーを追って会話は読むけど、地の文は飛ばすなどやんちゃな読み方はしませんでした。
実はこの項目は下書きを書いて、その後先へ進まなかった。でもブログってちゃんとしたコメントの前段階でもいいので、続きは後にして出す事に。
先週研究会があってメルヴィルの短編についてとても面白い発表があった。そんなのも前はちゃんと感想を書いていたのですが。それをジャック・ロンドンの伝記の書評もあるし。また無理しない程度にコンスタントに書いて行こうと。