アメリカ美術の勉強

今回の出張の移動中のテーマは「アメリカの絵画」でした。「アメリカ特論」の準備です。2部は今までのパワーポイントでやったのですが、どうも満足がいかない。それでどのようなアプローチにしようかと『アメリカ絵画の本質』(佐々木健二郎、文春新書)と『青年期のアメリカ絵画』(津神久三、中公新書)を携帯しました。もうすでに何度か読んでいるのですが、復習です。本当は12月初旬の支部大会の特別講演の時にくっ付けるミニ・シンポの企画も考えないといけないのですが。
 で、結局評価のための視察とヒアリングと、その結果をチームでまとめる作業は1日半かかりました。でも夜や朝はアメリカ絵画の文献を読んで気分転換。アメリカ絵画って一般的に1950年代のジャクソン・ポロックに代表される抽象画とその後の60年代のポップ・アートが有名ですが、専門家に言わせると具象画がアメリカの本流の様です。
 でも17世紀の独立前は日曜画家の肖像画、独立前後は英欧の影響、そして19世紀中ごろに初めてアメリカ的な風景画が出てきます。その後もイギリスとヨーロッパの影響と伝統から如何に脱するかという絵画におけるアメリカ的なアイデンティティーの探求をやってきたんですね。アメリカの自然はヨーロッパにはない物ですから、それを描けばアメリカ的な風景画になります。しかしそこにギリシャ・ローマ的な神殿が描かれたり、アメリカ的な風景にピューリタン的な霊的なものを描き込んだりしています。
 20世紀前半になると、ヨーロッパのキュービズム、フォービズムの影響も受けながらも、アメリカ的な都市や自然を具象的な手法で描き続けます。いわばテーマ(描く対象)がアメリカ的、手法はヨーロッパ的となりますか。それが20世紀後半となると、それまでのヨーロッパ的にはない、でも表現主義の影響を受けた抽象表現主義が世界の美術界を席巻し、次いでポップ・アートが芸術のポストモダン的に日常のもの(缶詰や洗剤の箱)などを並べたり、シルク・スクリーンで有名人の顔を並べたりして、芸術の概念を変える大きな流れとなっていく。
 このアメリカ美術が世界に知られる現代の2つの潮流が印象が強すぎるのですが、本流としては具象画です。これをrepresentationalというのですが、目に見えるものを再現するんですね。ですから抽象画とは違いますが、画家の目に写ったものを描くので、そこに画家の主観や個性が当然のように反映される。例えば、エドワード・ホッパーの「ナイト・ホークス」を抽象画とは言いませんが、ダイナーの窓の寸法などはリアルでは決してありません。ダイナーの中の客の孤独を描くためにありえない大きな窓のダイナーを描くんですね。
 言わば誇張されたリアリズム、それと商業主義との近接、アメリカ的な風景としての自然と都市。伝統をぶっ壊す抽象とポップ、などでしょうか。そんな事を具体的な画像でうまく説明できればいいのですが。