帰り来ぬ青春

ロックも聞くけれど、最近はシャンソンのそれも男性歌手の大人っぽさに惹かれます。ロックも含めアメリカ文化ってシンプルで若々しい、つまりは若者の文化でもあるんですね。それは以前から気づいていて書いてもいるんですが。そしてロックを知る前の中学生の頃からもシャンソンにもひかれていました。その演劇的な歌い方に反発も感じつつ、フランス文化に代表される知的な世界が好ましかったんですね。
でそんな個人的な紆余曲折を経て、いまあらためてシャンソンの青春を回顧する曲を聞いています。特にアズナブールの「帰り来ぬ青春」。そしてあの吉原幸子が訳した日本人歌手のカバーも聞いてみました。意外と梓みちよがいい。
同時に1953年に39歳で亡くなったウェールズの詩人のディラン・トマスの"Do not go gentle into that good night,Old age should burn and rave at close of day/Rage, rage against the dying of the light." もまた若い時と違った読み方をしています。若い時には自分が老人になったら、「あの心地よい夜に大人しく身を委ねてはいけない。年をとっても、終わりに向かって燃え、叫ばなければ。明かりが消える事に怒らなければ」と思っていました。
でもいま老人になってみて、「あの心地よい夜に静かに身を委ねればいい。年をとったら、終わりに向かって燃え、叫ぶ事なんてしなくていい。明かりが消える事に怒る必要もない」と思ってしまいます。実は詩人も若い日に年を取った時の事を想像して書いていたので、実際に年を取ってどう思ったかは分からないんですね。
この詩句は『バットマン』シリーズで有名なクリストファー・ノーラン監督の『インターステラ―』(2014)でも引用されたらしい。