マクベスとモダンの黄昏

7月に開催する大学の公開講座人文学部の担当で、委員から講師を頼まれていちおうタイトルと要旨をでっち上げました。
 タイトルは「マクベスとモダンの黄昏」、要旨は以下の通りです。要旨は400字以内と指定された時は、400字ぴったりにします。あまりその事に意味がないのはわかっていますが。さてどんな話ができるやら。

 神が世界を支配した中世が終わり、イギリスではエリザベス1世の死後、スコットランド王ジェームズ6世が1603年ジェームズ1世としてイングランド王に即位する。1606年に書かれた『マクベス』の物語はスコットランドの王位簒奪を巡る戦いの中、殺人で始まり殺人で終わる。ポーランドの評論家ヤン・コットは『シェイクスピアは我らの同時代人』(1961)の中で『マクベス』について、マクベスの殺人は人として究極の経験、つまり「アウシュビッツ的体験」と表現した。
その10年後の1971年に同じポーランド出身でアウシュビッツを生き延びたロマン・ポランスキーが血塗られたマクベスの悲劇を描いた。シェイクスピアの生きた近代(modern)初期は、ポランスキーが『マクベス』を撮った近代の終焉(postmodern)と似ているように思われるのは何故だろうか。原作と映画の2つの『マクベス』を通してその点について考察してみたい。(400字)