デリカテッセンとミステリー

ここ数十年で最高のケイパー・ミステリーとも言える『摩天楼の身代金』をまた再読してしまいました。作者のリチャード・ジェサップはThreat(『摩天楼の身代金』)を1981年に書いて翌年57才で亡くなっています。翻訳は1983年文春文庫で出ていますが、絶版。この作品は脅迫(threat)してお金を受け取る方法が斬新で、その準備が周到に描かれています。主人公はデリで配達のバイトをしながらコロンビア大学に通っているベトナム帰還兵。主人公が競馬で勝った配当金を受け取るGE(ジェネラル・エレクトリック)ビルの地下にある郵便局も懐かしい。ロックフェラー・センターにそびえるGEビルにはアメリカ三大ネットワークのNBCの本社が入っています。デリまたはデリカテッセンが30年前には一般的でなかったので、「店」に「デリ」とルビをふっていました。
さてニューヨークでも、デリと呼ばれるお店がたくさんあって、元々は惣菜(デリカテッセン)を売る店でした。英語のdelicatessenはドイツ語 のdelikatessenから来ていて、dilikat(おいしい)+essen(食べる)という意味です。更に遡るとラテン語のdelicatusなので、英語のdeliciousも同じ語源です。そのデリカテッセンは調理済みの洋風惣菜・サラダ・チーズやサンドイッチから一流ホテルの肉料理,洋菓子までを売る店の意味になりました。さらに飲料や生活雑貨等も取り扱っており、コンビニエンスストアでもあります。日本のようにどこでもコンビニがある訳ではないので、その役割も担っているのでしょう。
デリにはテイクアウトの海苔巻も置いてあり、サラダ・バーも。また注文に応じてサンドイッチを作ってくれるコーナーがあり、持ち帰ってもいいし、そこで食べる事もできます。そして『摩天楼の身代金』で重要な役割を果たしているようにデリバリーもあるんですね。結局デリは食品店+コンビニ+ファスト・フード店という多機能のお店と言っていいでしょう。もちろんファースト・フードだけではなく、確かEmporioという名前の店でしたが、キャビア、フォアグラなどの高級なデリカテッセンもあります。
 デリだけではありませんが、サンドイッチを注文するのには苦労しました。パンや具の種類、トマトやレタスはいるか、マスタードをつけるかなど予め注文の内容を用意して臨むのですが、お店の人が言っている事が聞き取れず、計画通り行かない事もあって最後まで緊張しました。