逃げるマルコ

さてずいぶんと引っ張ってきたオールスンの『特捜部Q 知りすぎたマルコ』(ハヤカワ、2014年6月)です。未解決事件専門の特捜部Qによる政府ODAの利権をめぐる犯罪捜査に、逃亡するロマの少年マルコの物語を絡めて、まさに巻を措く能わずでした。苦境にある聡明で健気な少年のヒーロー性は、ロリータ的な美少女ヒロインと同じくらい強力です。
 コペンハーゲン警察特捜部Qは失踪した外務省上級参事官の捜査を開始すると、彼がODAプロジェクトの汚職に関わっていたらしい事が分かります。汚職の黒幕は、参事官の上司、その友人とそ悪事の仲間へとつながり、捜査と物語は複雑に。一方ロマの独裁的なリーダーのもとで酷使・搾取される子供たちの一人マルコが組織から抜けて追われます。その過程でロマの組織が汚職財界人・外交官から請け負った参事官の殺人死体と遭遇し、少年は組織と腐敗財界人の雇ったさらなる殺し屋たち(ロシア人、アフリカ人)からも追われて、コペンハーゲンの街を逃げまわります。この逃げるマルコを助ける人もいれば、迷惑をかけられ裏切る人たちも。自分の才覚と体力と運で、走り、川に飛び込み、自転車に乗って逃げる。誰かマルコを助けてと思いながら読んでいました。幸いハッピー・エンディングでほっとしました。