ボブ・フォッシーとミュージカル

年末のBSで懐かしい『キャバレー』を放映していました。『キャバレー』=ライザ・ミネリという印象がありますが、冒頭のダンサーの群舞シーン見ていて、やぁこれはボブ・フォッシーの振り付けだなと思っていたら、監督もフォッシーでした。原作はクリストファー・イシャーウッドのGoodbye to Berlin (『さらばベルリン』、1939)の1章ですが、それについては項をあらためて。
さてボブ・フォッシー(Bob Fosse, 1927年 - 1987年)は1950年代にMGMミュージカルでダンサー兼振付師として活躍し、その後ブロードウェイ・ミュージカルの『くたばれ!ヤンキース』、『スイート・チャリティー』、『シカゴ』で振り付けを担当しています。1968年に舞台の映画化『スイート・チャリティー』で監督デビューしました。『スイート・チャリティー』はフェリーニの名作『カビリアの夜』(1957年)をブロードウェイでミュージカル化したものです。オリジナルではフェリーニ夫人のジュリエッタ・マシーナが演じた主人公を、映画では踊りも達者なシャーリー・マクレーンが演じていました。そして1973年には『キャバレー』でアカデミー監督賞を受賞しています。
その直前の1972年には、中世ヨーロッパを支配したフランク王国の王様を描いた『ピピン』(Pippin)でトニー賞を受賞し、さらに同年ライザ・ミネリ主演の舞台をテレビ用に撮ったLiza with a Zでエミー賞も受賞しますので、40代半ばの油の乗り切ったフォッシーでした。また自伝的な『オール・ザット・ジャズ』(1979年)ではカンヌ映画祭の最高賞パルム・ドールを受賞しています。40代でピークを迎えて自分を振り返るのは不思議ではないけれど、60才で亡くなっているので、50歳前後から不規則な生活で心臓などに病気を抱えていたようだ。没後1999年、彼の振り付けしたダンス・ナンバーを集めたミュージカル『フォッシー』がトニー賞を受賞しました。2001年ニューヨークにいた時に気に入って2回見に行きました。フォッシーの振り付けと言うのは、ダイナミックでセクシーで、見ていて楽しい。これは普通の舞台の使い方かも知れないけれど、舞台を横に広がるダンサーたち、奥から前の方に進んでくるダンサーたちの動きが客席から立体的に見えます。そう言えば脚立も使って縦の動きもあった。同じ頃にブロードウェイで見た『シカゴ』(これもフォッシーが振り付けを担当した)も映画版よりもよかった。
『キャバレー』撮影時のライザとフォッシー。