ジャンゴとマイナー・スィング

中学生の時に兄のレコードを聞いていましたが、その中にMJQがあって特に「ジャンゴ」が印象に残ってしました。その演奏は1953年のアルバムDjangoではなく、1959年のPyramidの中のDjangoだったと思います。演奏はミルト・ジャクソンのヴァイブがイントロで、ジョン・ルイスのピアノが荘重に加わってくるクラシカルなジャズでした。でもミルトのアドリブになるとジャズっぽく、全体としては葬送曲のように聞こえました。
当時中学生の僕としては「ジャンゴ」と言えば、『続・荒野の用心棒』(1966)でフランコ・ネロが演じたガンマンの名前としてインプットされていました。拷問で手をボロボロにされたジャンゴ(フランコ・ネロ)がガトリング銃(原始的なマシンガンンのようなもの)で、仇を皆殺しにした後に去っていくラスト・シーンでかかるテーマ曲も覚えています。『情け無用のジャンゴ』(1967)という作品もあり、この主人公の名前はマカロニ・ウエスタンの代名詞としてタランティーノの『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012)にまで影響しています。
さてジャズの「ジャンゴ」は、フランスのジプシー・ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの事であると分かったのですが、1953年に43歳で亡くなった時に、ジョン・ルイスが正にレクイエムとして作った曲です。つまり「ジャンゴ」は「亡きジャンゴに捧ぐ」とか「ジャンゴの思い出」という意味のメタ・ジャンゴ。でもジャンゴその人の音楽を初めて聞いたのは、大学生になっていた1974年の映画『ルシアンの青春』でした。これは『死刑台のエレベーター』(1958)でマイルスを起用したジャズ好きのルイ・マル監督の第2次大戦を舞台とした作品です。ゲシュタポの手先となったフランス人少年の悲劇を描いたものですが、そこで使われたジャンゴの「マイナー・スイング」にしびれました。
ヴァイオリン(ステファン・グラッペリ)とベースのイントロに導かれる、ギターのテーマ。コード・カッティングとシングル・トーンによるソロ。これがマイナー(短調)ながらスイングするんですね。この1曲のためにジャンゴのアルバムを買いました。そして、少しジプシー=ロマの事にも興味を持つことに。年末にもジャンゴ・ラインハルトについての1時間くらいのドキュメンタリーをWOWOWで偶然目にして。ロマの人たちって、亡くなったらその人の遺物を燃やしてしまうらしい。家も燃やしてしまう。この場合はトレーラー・ハウスでしたが。言わば究極の断捨離ですが、移動する民族の当然の始末ですかね。ジャンゴのジャズって、スイングしても哀愁があるっていうか、エントロピー的に下降するパワーが感じられます。でもそれって、ジャズやフラメンコなどの周辺に位置する人の音楽の特徴かもしれない。
https://www.youtube.com/watch?v=VpmOTGungnA