ジプシー〜ヒターノ〜ジタン

 土曜日にヘミングゥエーの『誰がために鐘は鳴る』(1940)に関する発表があるので、翻訳と原書(Kindleで100円でした)を軽く?再読。スペイン内戦下の主人公のアメリカ人ロバート・ジョーダンとスペイン人女性マリアの他の反ファシズムのゲリラ隊の殆どがジプシーである事をあらためて知った。
ジプシー (gypsy, gipsy) は、一般には主としてヨーロッパで移動して暮らしている人々で、様々な地域を渡り歩く人たちを比喩的に意味する言葉ともなっている。この言葉は当人たちの自称ではなく、ほかの人たちが彼らを差別的に呼ぶ外名である点は重要だ。
ジプシーは1427年にパリに現れ「自分たちはエジプトの出身である」と名乗った事から、「エジプトからやって来た人」という意味の「エジプシャン」と呼ばれる。さらに頭音が消失した「ジプシー」 (Gypsy) という呼称が生まれた。最近は「ジプシー」は差別用語と見做され、「ロマ」と言い換えられる。しかし、ジプシーの北インドのロマニ系に由来し中東欧に居住する移動型民族である「ロマ」と呼び換えても、差別の構造は変わらないと思う。
さて、スペインではジプシーのことをヒターノ(Gitano)と呼ばれ、スペインの歴史の中では、セファルディムと呼ばれたユダヤ人と並んで迫害されてきたらしい。ただユダヤ人ほど政治や経済の中心とならないが、フラメンコのギター奏者や踊り手、歌い手はヒターノが多いらしい。GitanoはフランスではGitanと呼ばれ煙草の銘柄でも有名だが、『ル・ジタン』(Le Gitan、1975年)をアラン・ドロン主演のジプシーの犯罪映画として記憶している。