鮨の夢

夢を見るほどではないけれど、鮨はけっこう好きです。東京では「水谷」へは何回か行きましたが、水谷さんの師匠である小野二郎さんの「すきやばし次郎」にはまだ行った事がなく、一度行きたい。でも3万円のフィックス・プライス。前にも書いた事があるかも知れないけれど、結婚前にかみさんが横浜に住んでいたので札幌から行くと関内にある「次郎よこはま店」」で時々食事をしていました。水谷さんが独立して構えた店で、最初は4500円くらいからの料金でした。その時漫画の原作者でおまかせで食べているのを羨ましく?眺めていた記憶がありますが、その人は『江戸前ずしの悦楽』(1999、晶文社)を書いた映画監督でもある早川光さんだったような。副題は「『次郎よこはま店』の十二カ月」で、季節ごとのネタを写真とともに解説しています。
そこで茹でたエビのうまさと、蒸したアワビの美味しさを初めて知りました。水谷さんは努力ももちろんしただろうけれど天才肌の職人さんという風に見ています。そのいい点は勘と判断の速さ、欠点があるとしたらここまで来たらもういいかという具合に見切りも早いのだろうと思います。
しかし師匠の小野二郎さんは、87歳にしてまだ努力し続けている。頂点を極めても、まだ先があると思い続ける。そんな小野二郎さんを主人公とした『二郎は鮨の夢を見る』(2011年)を見ました。やっとここでタイトルとつながります。アメリカ人監督によるドキュメンタリー映画小野二郎さんが当時85歳でもなお、すしの技を極めようとする姿と、伝説的存在である父に追いつおうとする長男を捉えた作品です。長男と次男の葛藤も少し描かれます。音楽は聞いた事があると思ったら、フィリップ・グラスで『めぐり合う時間たち』からの曲もあるような気がする。でも会話にかぶさる音楽が大きすぎて感興を壊しているところが残念。後で日本語の会話には英語の字幕が入っている事が分かりましたが、それでも音に対して鈍感だなとの思いは変わりません。日本の、という事は世界の頂点を極めた鮨職人についての情報としてはとても面白かったですが。