Nothing But the Truth

映画の法廷の場面で、証人が”Do you swear by Almighty God to tell the truth, the whole truth and nothing but the truth?”(全能の神にかけて真実を, すべての真実を, そして真実だけを述べることを誓いますか。)と聞かれて、”Yes, I do.”(はい)と答えてから証言が始まるのをよく見ますが、定例の形式的なやりとりなのですごい早口でこの宣誓がされます。
イギリスのオックスフォード大学中退?の女優ケイト・ベッキンセイル(1973年)主演の『ザ・クリミナル 合衆国の陰謀』(2008年)はこの”Nothing But the Truth”を原題としています。この映画は日本では劇場未公開。
大統領暗殺未遂事件が発生し、政府はベネズエラ政府の陰謀として報復攻撃を始める。しかし、サンタイムズ紙の記者レイチェル・アームストロングは、幼い息子の同級生の言葉から、ベネズエラの関与を否定する報告があったのに政府がそれを握りつぶした事を知って記事にする。記事は注目を集めるが、レイチェルは法廷で情報源を明らかにする事を拒否したので、法廷侮辱罪で拘置所に入れられてしまう。一方、レイチェルの記事によって、ベネズエラの関与を否定する報告をしていたエリカ・ヴァン・ドーレン(ヴェラ・ファーミガ)はCIA職員であることを暴かれ、CIA内部から排斥された末に、大統領を侮辱したと考えた右翼の男に射殺される。さらにレイチェルの事件は最高裁で争われることになる。当初から関わっていた弁護士バーンサイドアラン・アルダ)は「表現の自由」と「メディアの役割」を訴えるが、国家の安全が優先されるとしてレイチェルの訴えは退けられる。レイチェルの収監は1年に及び、夫レイと離婚、息子ティミーの親権も奪われてしまう。それでも情報提供者を明かそうとしない彼女に、最初に拘置を決めた判事は収監に意味がないとして釈放を決めるが、納得できないFBI特別検察官パットン・デュボア(マット・ディロン)は、釈放直後のレイチェルを法廷侮辱罪で逮捕する。レイチェルは2年の実刑を受け今度は刑務所に送られる。
そのバスの中で、レイチェルは、エリカがCIA職員であることを初めて知った時のことを思い出す。レイチェルは情報提供者であるエリカの幼い娘を守り通した。しかしそのために夫と息子も失う意味があるのだろうか。母性を描いた映画でもあるので、幼い息子にとって信念を貫く偉い母親よりも、ずっとそばにいてくれる普通の母親の方がいいように見えます。ま、大人になってから母親のつらさも理解できるようになるのかも知れないけれど、子供時代の時間を共有できない親子の欠落感はぬぐえないか。エリカ(左)とレイチェル(右)