二人のマーロウ

『眼下の敵』(The Enemy Below)をWOWOWで見る。この戦争映画の古典は1957年のディック・パウエル監督の作品。第二次世界大戦中、トリニダードへ向うアメリカの駆逐艦ヘインズは、浮上航行中のドイツUボートを発見する。駆逐艦のマレル艦長(ロバート・ミッチャム)は先手を打って主導権を奪う。圧倒的に駆逐艦側が有利な状況の中、Uボートのシュトルベルク艦長(クルト・ユルゲンス)は戦意を失わず抵抗を続けていた。両艦長は戦争には批判的だが義務感から戦闘を続けていたが、知力を尽くして戦う中で互いに対する奇妙な尊敬の念が生まれる。二人とも最後まで艦を離れず、部下を見捨てず、軍人の鑑のような英雄として描かれます。
 実は監督のディック・パウエルは俳優が本業で、『ブロンドの殺人者』(Murder, My Sweet 1943)で、フィリップ・マーロウを演じています。原作は『さらば愛しき女よ』(Farewell, My Lovely、1940)。そしてロバート・ミッチャムの方は『さらば愛しき女よ』(1975)でのフィリップ・マーロウ。その時実に61歳。マーロウは6作目の「長いお別れ」では42歳なので、30代後半〜40代の設定。61歳では年寄り過ぎるけど、僕と同じ年。でもロバート・ミッチャムは1940〜50年代のフィルム・ノワールの出演実績を背負って、とても素敵な老境のマーロウでした。