最終講義

アメリカ黒人史の第一人者上杉忍先生の師本田創造氏の『アメリカ黒人の歴史』(岩波新書、1964年)を書き替える試み『アメリカ黒人の歴史―奴隷貿易からオバマ大統領まで』について、話された。特に本田氏のこの分野におけるテキスト的なご本は公民権運動の時代に書かれているので、その後ちょうど半世紀たった現代の視点から、初の黒人大統領の登場物含めて論述する画期的な著書を上杉先生は書かれた。その経緯については、2011年の支部大会に特別講演の講師として話して頂いた。師の著書を批判的に書き換えるのは、弟子の務めでもあると思いました。
 もうお一人、浜忠雄先生も、ハイチ研究の第一人者で、最終講義では、フランス革命の人権宣言を不完全なものと規定し、それを独立を勝ち取ったハイチが完全なものとしたとする。つまり、アメリカの独立宣言と同様、人権は白人・男性のものとしか考えられなかった、近代市民国家、国民国家の市民・国民の定義そのものが限定的で、それを後からマイノリティ(有色人種、女性)が補完的に完成させる。さらに人文主義も人間中心から、自然や動物と共生する新人文主義的なコンセプトに改良・発展すると言う、人文学部の標榜する理念と、ご自分の研究を重ね合わせた。