卓袱台の詩人

田澤 拓也さんが書いた『無用の達人 山崎方代』をまたKindle(650円)で読んでいます。やはり 角川ソフィア文庫(820円)より安いのと、ネットで買ったらすぐ読めるのがすごい。きっかけは学部の同僚T先生の書評ブログで取り上げていたのですが、その前に東海林さだおさんの『おにぎりの丸かじり』(2008年)で方代の短歌が紹介され印象に残っていました。具体的には、「卵焼きに本心を」の章で「卓袱台の上の土瓶に心中をうちあけてより楽になりけり」が取り上げられ、さらに無理やり?「こんなにも湯呑茶碗はあたたかくしどろもどろに吾はおるなり」も紹介されていて。何か、土瓶に心の中を打ち明けたり、湯呑み茶碗にドギマギしたり、日常的で庶民的で、でもちょっとシュルレアリスム的にも読めたりするような気がしました。つまりロートレアモンの「解剖台の上での、ミシンと雨傘との偶発的な出会い」のような異質なもの出会いによる驚きが、日本の卓袱台でも実現したような気がしたのでした。山崎 方代(やまざき ほうだい)は、1914年(大正3年)に山梨で生まれ、1985年(昭和60年に70歳で亡くなった短歌の歌人です。戦争で片眼失明、結婚せず、定職なし。放浪の詩人とも言われるようですが、厳密には放浪ではなく、年の離れた姉の家に、その死後は鎌倉で知人の家に寄宿していました。まだ『無用の達人 山崎方代』を読んでいる最中なので中間報告。