フィルム・ノワールのグロリア・グレアム

グロリア・グレアム(Gloria Grahame)はゴージャズな美人と言うよりは、キュートなタイプでしょうか。若い時のアネット・ベニングのように小股の切れ上がった感じです。『復讐は俺に任せろ』での、飲み物を持って移動する動きにリズム感があって小気味いいんですね。
ブロードウェイに出演していたところをルイス・B・メイヤーに認められMGMと契約。
1946年『素晴らしき哉、人生!』(フランク・キャプラ監督)映画デビュー。ビリングは9番目。
1947年『十字砲火』(エドワード・ドミトリク監督)でアカデミー賞にノミネート。第2次大戦終結後の混乱期でのユダヤ人殺害事件を描く。 警部(ロバート・ヤング)、ユダヤ人嫌いの犯人(ロバート・ライアン)と彼の上官(ロバート・ミッチャム)に次いで、ビリングは4番目。

1949年『女の秘密』(Woman’s Secret、ニコラス・レイ監督)モーリン・オハラとメルヴィン・ダグラスに次いでビリングは3番目。スターのモーリン・オハラの世話をしている内にグロリア・グレアムと地位が逆転すると言う『イヴの総て』(1950)の元ネタのような物語です。

1949年『渓谷の銃声』(マーク・ロブソン監督)西部劇。主演の相手役で、ビリングは2番目。
1950年『孤独な場所で』(In a Lonely Place、ニコラス・レイ監督)は、シリアル・キラーを題材にしたサイコ・サスペンス。広い意味でのフィルム・ノワールにも入る。才能はあるが暴力的な衝動を抑えられない脚本家(ハンフリー・ボガート)と元女優(グロリア・グレアム)の破滅へと向かう恋愛映画。ビリングは2番目。

1952年『悪人と美女』(ヴィンセント・ミネリ監督)ハリウッドの敏腕製作者(カーク・ダグラス)をめぐる愛と友情と裏切りの物語。アカデミー助演女優賞を受賞。ビリング6番目。
1952年『突然の恐怖』(Sudden Fear,デヴィッド・ミラー監督)ジョーン・クロフォード主演、ジャック・パランス共演のスリラー。ビリングは3番目。
1953『復讐は俺に任せろ』(The Big Heat, フリッツ・ラング監督) グレン・フォード共演。リー・マーヴィン(ボスの一番の子分)に煮えたぎったコーヒーをかけられる愛人役です。ビリングは2番目。
1953『綱渡りの男』(エリア・カザン監督)ビリングは3番目。

1954『仕組まれた罠』(Human Desire, フリッツ・ラング監督)グレン・フォード共演。ゾラの『獣人』の1938年の映画化であるジャン・ギャバン主演・ジャン・ルノワール監督の『獣人』のリメイク。内容的にはグロリア・グレアムの演じるヴィッキーはファム・ファタール的ですね。

1955年『蜘蛛の巣』(ヴィンセント・ミネリ監督)リチャード・ウィードマーク、ローレン・バコール、シャルル・ボアイエに次ぐ、ビリングは4番目。精神病院の院長(ウィードマーク)の病院経営と愛情問題。
1955年『見知らぬ人ではなく』(スタンリー・クレーマー監督)ビリングは4番目。傲慢な医学生の悔悛の物語。

1949年『女の秘密』で知り合ったニコラス・レイなど、4度も結婚しています。しかも4番目の夫アンソニー・レイは2番目の夫ニコラス・レイの息子で義理の息子だった相手なので、これはそれなりにスキャンダルになったようです。1981年ニューヨークで57歳で亡くなりました。早すぎるような。
映画出演歴をみても、ピンで主演を張るタイプでなくて、よくて主演の相手役ですね。でも、それでいい。
アネット・ベニングと似ていると言いましたけれど、『グリフターズ/詐欺師たち』(The Grifters、1990)でのマイラ(アネット・ベニング)はファム・ファタールでしたね。でもマイラの恋人=自分の息子を殺すアンジェリカ・ヒューストンの方がすごかったです。ま、原作がジム・トンプソンなので、ハードボイルドよりはノワールに片足(両足?)を踏み入れたような、悪党だらけの世界を、スティーヴン・フリアーズ監督はスタイリッシュに描いてくれました。