私のお気に入り

 1965年に映画で大ヒットした『サウンド・オブ・ミュージック』の挿入歌My favorite Thingsをジョン・コルトレーンは1961年アトランティック・レコードから出した『マイ・フェイヴァリット・シングス』で演奏しています。メンバーはジョン・コルトレーン (sp)、マッコイ・タイナー(p)スティーヴ・デイヴィス (b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)。この演奏ではピアノのイントロから若干ゆっくり目のソプラノがメロディーを奏でる。コルトレーンが使い始めたソプラノ・サックスは、今ではフュージョンのケニーGなど、ジャズだけでなく一般的な楽器になっている。前にも書いたかもしれないけれど、入り易いだろうと思い、ソプラノ・サックスの練習管を買ってトライしてみたが、まず音が出ない。後からアルトをやるゼミ生に聞いてみると、音の高い楽器の方が音を出すのが難しいとの事でした。彼女(そのゼミ生)は今駅前の楽器店に就職しているので、お小遣いに余裕が出来たらそこそこのアルトを買おうと思っているのですが。
 さて最初の「マイ・フェイヴァリット・シングス」から2年後の1963年と1965年にニューポート・ジャズ・フェスティヴァルで同曲を演奏している。そのうち1963年版が『セルフレスネス』というアルバムとして1965年でにインパルス・レコードから出ています。
 僕を含め多くのジャズ・ファンはこの『セルフレスネス』での演奏を好むのではないでしょうか。ここではコルトレーンはまずテナーでメロディを吹き、ピアノが入り、ロイ。へインズのドラムの小刻みなスネアが場を設定したところで、おもむろにソプラノに持ち替えてアドリブに入ります。初演より若干テンポが速いのですが、逆にこれを最初に聞いて1961年版を聞くとゆったりというか、スローに聞こえてしまう。とは言え、初演版でも出だしは様子を見ながら、ゆっくりとアドリブを重ねていくけれど、後半ではサックスもピアノも少し自由度が増すような演奏になっているのも興味深い。
 次にコルトレーン没後40周年記念として2007年に出たCD『マイ・フェイヴァリット・シングス:コルトレーン・アット・ニューポート』は、前述の1963年と1965年のニューポート・ジャズ・フェスティヴァルのライヴを1枚にまとめたもので、『セルフレスネス』収録のマスター・テープからのレストアという事で音もいいようです。
 この1965年ではバス・ドラとピアノがイントロで、その後ソプラノが入ってきますが、やはりこの間の演奏スタイルの変化を反映していて、コルトレーンやマッコイがフリーに傾いている様に聞こえます。
 ジャズでは一人のミュージシャンの発展の経過をたどるのに、同じ曲の時代別の演奏を聞き比べると、演奏スタイルに違いがあって面白いです。コルトレーン海賊版も含めて800枚近いディスコグラフィーを詳細に調べているファンはいるでしょうけれど、コルトレーンの初級者として、気になる「マイ・フェイヴァリット・シングス」について少し書いてみました。ヨーロッパのツアーのライブでは最速の「マイ・フェイヴァリット・シングス」版もあるそうです。写真は"Selflessness"のジャケット。