新聞記者が主人公

 『ペーパー・ボーイ』を論じるために、新聞記者が主人公の翻訳ミステリーをまず書誌的に紹介。
 時代順に『悪徳警官』で有名なW・P・マッギヴァーンの。『緊急深夜版』(1981、文庫)。1990年代からジェリー・ボイルによる「元ニューヨーク・タイムズ記者ジャック・マクモロー」シリーズが『究明』、『鮮血』(1995)講談社文庫)
 2000年代になると、イギリスのジム・ケリーによる新聞記者フィリップ・ドライデン・シリーズが創元推理文庫で『火焔の鎖』(2005)、『水時計』(2003)。
 単発でジョン・モーガン・ウィルソンによる『夜の片隅で』(ハヤカワ文庫, 2002)、ジョン・グリシャムの『最後の陪審員』(新潮文庫、2008)、ライアン・グルーリーの『湖は餓えて煙る』(ハヤカワ・ミステリ、2010 )、ブルース・ダシルヴァ『記者魂』(ハヤカワ・ミステリ、2011)が挙げられる。
 このうち『夜の片隅で』はピューリッツアー賞を受賞するが捏造記事であることが発覚して失意のゲイの記者ベンジャミン・ジャスティスは『ペーパー・ボーイ』の語り手の兄と同僚がやはりピューリッツアー賞を受賞するが記事の信憑性を疑われる点で類似している。またリーガル・サスペンスの代表作家グリシャムの『最後の陪審員』は主人公が地方紙の経営者である点が、ペーパー・ボーイ』の語り手の父親と似ている。
 アメリカの新聞は日本のように全国紙がないことは知られているけれど、この2作の様に本当に中小企業のような新聞がある点もずいぶんと日本とは事情が異なっている。
 ペーパー・ボーイ』についてはできれば詳しく論じたいのだけれど。