怪優ウォーケン

 『ディア・ハンター』(1978年)で有名なクリストファー・ウォーケンは、ポール・マザースキ監督の『グリニッチ・ビレッジの青春』(1976)で主人公の友人、『アニー・ホール』(1977)ではアニー(ダイアン・キートン)の弟役(チョイ役でした)でも印象に残っています。
 1943年生まれのドイツ系のウォーケンは、幼い頃からダンスや演技を学んでいました。ベトナム戦争を描いた『ディア・ハンター』でのニックは35歳の時でしたが10歳くらい若く見えましたね。前にも書きましたが、戦争に行く前に仕事の後の行きつけのレストラン・バーでの仲間との楽しそうな様子と、戦後のロシアン・ルーレットの場面との対比が印象的でした。
 僕は1983年の『デッド・ゾーン』でのウォーケンが好きでした。交通事故にあって未来を予見できる超能力を持つことになるのですが、それが彼を不幸にする。アメリカを核戦争に引きずり込む大統領候補の当選を阻止しようとして死んでしまいます。不実な恋人を演じるブルック・アダムスが如何にもそれらしくて?いいです。原作がスティーブン・キングで、監督がなんとデヴィッド・クローネンバーグなのもよかった。これはクローネンバーグのちょっと変わった個性が出過ぎないでいいと思います。
 実はこのクリストファー・ウォーケン、日本でファン・クラブがありました。きっと日本くらいでしょうね。でも『デッド・ゾーン』の時は40歳なのに30前後に見えました。若い時の写真を見るとやはり繊細そうな美青年ですね。
 面白いのは90年代から怪優的な個性が出て来ます。1997年にロンドンで見た『フューネラル』(アルベール・フェラーラ監督)で美青年〜怪優ウォーケンの変貌をみて少し驚きました。
 2001年にはニューヨークで、何かのCMで踊り続けるウォーケンを見てまた驚きました。後から舞台のミュージカル俳優出身であるため、多くの出演作品の中で多かれ少なかれ踊っている事を知りました。2001年に見たのはCMではなくて、ファットボーイ・スリムの「Weapon Of Choice」のPVでした。製作はスパイク・ジョーンズで、ウォーケンはスーツ姿で曲中ひたすら踊り続ける姿が話題になったようです。