若手の活躍
北海道支部の藤井光君から『神は死んだ』(白水社)が送られてきました。もう何冊目の翻訳になるのか分からないくらいたくさん出しています。
今回はアメリカの若手作家による、聖書を各短編のエピグラフにした短編集。舞台はスーダンそしてアメリカ。時代は現代と近未来でしょうか。冒頭の「神は死んだ」はスーダンのティンカ族の若い女性が神となって現れ、その救いの好意がなかなか報われない。彼女はアメリカの国務長官のコリン・パウエルに民兵集団のジャンジャウィードに拉致された弟の救済を頼みます。パウエルはアメリカ国内の黒人差別を強烈に皮肉り、アフリを故郷の様に思うのだが、宗教と部族間の軋轢を理解できない。最後にはこの若い女性の神はあっけなく死んでしまいます。
このドラマティックでもなく、無意味な神の死が、ポスト・ポストモダン的な混沌とした現代を象徴しているようでもあって。この短編集はそれなりに面白いのだが、長編はいまひとつという訳者の見解でした。
そんなコメントを書いていたら、支部事務局から『タイガーズ・ワイフ』(テア・オブレヒト著、新潮社)が、「2013年本屋大賞」の翻訳小説部門で、第一位を受賞したという連絡が入る。藤井君、おめでとう。詳しくは、こちら http://www.hontai.or.jp/ をご覧ください。最近では直木賞などより、影響力もあると言う意見もあります。本屋さんと言うのは評論家より読者の側に立っていて、普通の読者よりも本を読んでいる人も多いようなのですね。
若手の活躍と書いたのは、もう一人40代後半の研究者の単著が送られてきました。若手というよりは中堅なのですが、若々しい人なので。振り返って自分の事を考えると内心忸怩たるものがあります。2週間後に発表する原稿を読み返しても、考察と言うよりは紹介に終わっている事が分かり、少し暗い?気持ちに。
最初の1週間が終わり、ホッとしたのと、気落ちしたのと相まって、でもお酒を呑めばすべて忘れてしまうのが、、救いの様な気もします。元の木阿弥とも言いますが。