ジャーナリスト〜作家

前項は最初「ジャーナリスト〜作家」と題して書いているうちに、「ミステリーに描かれたメディアの変遷」になってしまった。ま、よくある事なんですが。
 さて当初の意図は、『ザ・ポエット』、『スケアクロウ』の主人公のジャック・マカヴォイのキャリアについてのでした。地方の新聞記者が大ネタをスクープして大都市の大手新聞社に引き抜かれる事を夢見るのはよく分かります。で、彼らの希望するもう一つのキャリアは作家だと思います。すべてのジャーナリスト、新聞記者が作家を志望するかどうかは別として、物書き、ライターとしての一つの頂点は小説家だと。ジャックも引き出しの中に未完の小説をしまっています。
 現場の記者として30代から40代くらいまで務められるとして、その後デスク(編集長)までジャーナリズムの世界にいるなら別として、30才前後で将来の展望を考えると思います。その時ジャックのように特ダネを本にまとめて大手新聞社に移籍し、また特ダネで本を書くか、ジャーナリズムの世界から離れて小説の方に進路を変えるか。ジャックは未完の小説を引き出しにしまったまま、のんびりしていたらリストラにあってしまった。しかし『スケアクロウ』で遭遇した大事件をまた本にしてジャーナリズムの世界にとどまるのだろうか。それは作者次第ですね。
 さてその作者のマイケル・コナリーは36歳で『ナイト・ホークス』を出して作家に転向していますから、年齢的にはちょうどいいタイミングだと思います。しかし古巣のLAタイムでのジャック・マカヴォイの処遇、仲間や上司の描き方を見ていると、新聞ジャーナリズムへの視点は、懐かしさやシンパシーも、そしてその将来への心配もあるでしょうが、ある種のル・サンチマンも垣間見えます。つまり作家として名を成した元ジャーナリストの余裕と同情を交えた批判的視点かなと思いました。