color-blindなハリー・ボッシュ

 また年末はマイクル・コナリーのハリー・ボッシュのシリーズを読んでいます。最近は別シリーズのリンカーン弁護士の訳以外にボッシュの新作翻訳されていません。それでNine Dragonsをペーパー・バックで読んだ話は前にしました。今回は2011年のThe Dropを読みました。
 訳あって(前作Dragonsのネタバレになるので伏せますが)、娘のマディと暮らしているボッシュの新しい事件は因縁のアーヴィン・アーヴィングの息子の自殺の捜査。そして連続殺人犯の再捜査。再捜査の方はcold caseという迷宮入りの事件をあらためて捜査し直す。
 今回の同僚は中国系のチュウ刑事。それで気が付いたのだけれど、ボッシュの同僚は初作の『ナイト・ホークス』から『ラスト・コヨーテ』までジェリー・エドガー、黒人男性刑事。ジェリーは副業で不動産屋をしており、極めてアメリカ的。4作目の『トランク・ミュージック』から黒人女性刑事のキズミン・ライダーが参加。ボッシュは新人刑事のある種mentorという指導係を演ずる。さてさてキズが事件で重傷を負い、デスク・ワークに移った後の同僚は、イグナシオ・フェラスでかれはヒスパニック系。そして今回のチュウ刑事は前作のDragonsで中国系の関係者がいたので通訳を兼ねて登場し、今回のThe Dropでは同僚に昇格。
 ことほど左様にボッシュは、というかマイクル・コナリーはcolor-blindなのである。color-blindというのは人種的偏見がないと言うか、同時にかなり意識している態度のようにも思える。