シェーンとギャッツビー

 このタイトルでは、アメリカの小説と映画の両方に関心がある人でも分からないと思います。実は『シェーン』(1953)のアラン・ラッドが主演した『暗黒街の巨頭』(1949)は、あの"The Great Gatsby "の映画化だったんです。今読んでいる「フィルム・ノワール」の本によると、アラン・ラッドはフィルム・ノワールのスターという事で、日本人の印象とはずいぶんと違う。
 「フィルム・ノワール」が作られたのは1940年代なので、戦中・戦後の日本に入ってきた1950年代にはアラン・ラッドはそのフィルム・ノワールにおける活躍のピークが過ぎ、『シェーン』一作で知られるスターとなってしまった。アラン・ラッドが主演したフィルム・ノワールグレアムには、グリーン原作の『拳銃貸します』(1942)、『青い戦慄』(1946、レイモンド・チャンドラーのオリジナル脚本)などがあります。
写真は歴代ギャッツビーで、アラン・ラッド、ロバート・レッドフォード、トビ―・スティーブンス(2000年、TV版)、そしてこれから公開のデカプリオ。ギャッツビーと『ロング・グッド・バイ』には訳者あとがきで村上春樹が書いているように重要な共通点がある。ギャツビー=テリー・レノックス(『ロング・グッド・バイ』)そしてニック・キャラウエー=フィリップ・マーローのキャラクターの類似。マーローと束の間の友情を結ぶテリー・レノックスもギャツビー同様に大戦でイノセンスを失い、戦後の喪失感の中で無意味な夢を見て悪事に手を染める。その点がある種のノワールとも呼べるが、また同時にギャツビーの複雑なキャラクターを演じるのが難しい事になる。歴代ギャツビー役者では誰が適役だろうか。