『シン・レッド・ライン』を観る

 テレンス・マリック監督の『シン・レッド・ライン』(1999)をStarChannelでみた。
 鬱蒼とした緑と原色の鳥、青い空と海に囲まれた熱帯の島に、メラネシア系住民たちに混じって子供たちと遊ぶ白人の姿があった。『地上より永遠に』の主人公プリウィットを連想されるアメリカ人逃亡兵ウィット(ジム・カヴィーゼル)。しかし自然の中で平和に暮らす彼の逃亡生活は、ウェルシュ軍曹(ショーン・ペン)のはからいで再びC中隊に戻ることになり終わってしまう。
その間にもアメリカの上陸用舟艇は白波をけたてて続々と日本軍が占拠しているガダルカナル島をめざしていた。日本軍の攻撃を警戒して緊張するなか、無事に上陸を終えた兵士たちは、銃を構え、隊列を組みなおし、内陸部をめざしてどんどんと行進していく。彼らを待ち受けているのは、降りそそぐ砲弾と弾丸の雨。そして地雷が埋めつくされた丘陵地帯。しかし、兵士たちは命令に従ってひたすら前進するのみ。C中隊の面々は、死への恐怖を押さえつけながらこれから最前線に補給される、そんな新たな兵力の一団だった。
 C中隊隊長のスタロス大尉(エリアス・コーティアス)は、いつか自分の家族のように慕いはじめた部下たちの命を守ることに心をくだく、優しい心の持ち主だった。ところが最前線でいきなり部下たちが日本軍の仕掛けた地雷に次々とふきとばされ、弾丸に体を貫かれてはじけ飛び、転げまわる姿を目撃しながら、彼はなすすべもなかった。そして、日本軍の守備隊がたてこもる丘を、出世のために、何としても速やかに占領したいトール中佐(ニック・ノルティ)の一方的な攻撃命令に反発し、無理な前進を拒絶する決心をした。敵を目前にした、最前線で、対立するふたりの指揮官。上官であるトールが指揮権を発動して隊を再編成し、決死の斥候隊を派遣する。
 斥候隊のベル上等兵ベン・チャップリン)は、戦場にあっても最愛の妻のことばかりを夢想し、自分が不在の間に妻を他の男に取られてしまうのではと気に病む男だった。しかし、彼の決死の働きで、日本兵のバンカーを突き止め、攻撃部隊を再編して味方は攻勢に転じる。長く激しい地上戦を繰り広げた末に、銃弾の雨をくぐってついに敵の陣地に乗り込む兵士たち。彼らは嵐のように突撃し、抵抗する日本兵を次々と撃ち殺し、塹壕に身を隠す日本兵を手榴弾で吹き飛ばし、病気と飢餓で痩せ細った兵士たちを次々と捕虜にしていく。映画は、激しい戦闘のなかで殺す側と殺される側とをひたすら淡々と描いていく。
 銃をつきつけて「お前は死ぬんだ」というアメリカ兵に、「お前も死ぬんだ」と言い返す日本兵。激しい戦闘の末にこの陣地をひとつ落としても、それはこれから先に待っている長くつらい戦闘の序章にすぎないのだった。
 かくしてC中隊は作戦に成功した。だがトール中佐は命令にそむいたスタロス大尉を名誉除隊させる。そのため3年間も寝食をともにした指揮官を失ったC中隊の指揮系統が乱れる。再び斥候隊を選んだ新隊長の誤った人選に気づいたウィットは、志願して斥候隊に加わることにするが、日本兵の一団を前にして仲間のミスで窮地にたたされる。かくして、ウィットは自らを囮にしてC中隊を救おうと敵に身をさらす。