欲望の資本主義とグローバル化?

 英米のミステリーや映画ではよく出てくる「ケイマン」という地名が日本でも本格的にメディアに紹介されましたね。 イギリスの海外領土で西インド諸島の一つCayman Islands(ケイマン諸島)は、tax haven(租税回避地)で知られています。タックス・ヘイブンと同義であるらしいオフショア・バンキングや資産運用、特別目的会社(資産の流れを曖昧にするためのペーパー・カンパニーの一種)、そしてマネー・ロンダリングにも使われるから、如何にも如何わしい資本主義の象徴、ある種の欲望の資本主義の装置とも言えます。
 トム・クルーズ主演の『ザ・ファーム 法律事務所』(原題: The Firm、1993年、ジョン・グリシャム原作、シドニー・ポラック監督)でも、メンフィスにある法律事務所がシカゴのマフィアのお金を洗浄するのにケイマンを使っていました。
 日本では先日オリンパスが、1000億円の「飛ばし」(投資損失を隠すための処理方法)で使ったのがケイマン。そして昨日の新聞ではAIJ投資顧問という会社が運用を任された企業年金2100億円を無くした資金操作の一環としてケイマンが出てきました。ケイマンのファンドに移した資産をバミューダ諸島の信託銀行を通じて運用するように見せかけて、実際には香港の欧州系銀行に資産を移して管理していたらしい。
 まさに日本〜カリブ海北大西洋〜香港〜ヨーロッパにまたがるグローバルな経済活動を日本もしている事になる。それもオリンパスと言う一企業だけではなく、公共性の高い企業年金の運用においても?
 グローバル化って、国境を越えた人や文化の交流という意味においていい点もあるだけれど、どうも悪用される傾向があるような気がしてならない。よきグローバル化を推進しつつ、悪しきグローバル化を阻止するモラルをそれこそグローバルに広めていかないと思う。そうしなければ、モラルなき資本主義と歯止めのきかない欲望が国境を越えて跋扈する事になってしまい、世界的な規模での格差の拡大と不満が募るばかりではないかと心配ですね。