Deer Hunterの事など

 雑誌に書いた「映画、この一本」では最初に『グローリア』について原稿を用意していた。1980年ジョン・カサベテス監督のこの作品について書いた後、雑誌で紹介するためのジャケット(表紙、かばー)のあるDVDかVHSがなく、『チャイナタウン』に変えました。VHSでの画像があっても録画だったりして表紙が無いとだめでした。
 その後最近時々BSでやっている『ディア・ハンター』を見て、これも「この一本」の候補だったなと思いだしました。BSではスター・チャンネルで同じ映画を何度も放映したり、WOWOWで交互に流す場合もあります。
 さてこの『ディア・ハンター』、一時期好きでした。今は少し疑問があったりして。でも見どころはたくさんあります。3時間の長尺の映画の最初の3分の1が、ペンシルバニア州ピッツバーグに近いクレアトンという鉄鋼の町のロシア系移民の若者たちの生活描写。じつはこの前半3分の一と、中盤のベトナムの戦場、そして戦後と分かり易いです。
 夜勤明けに行きつけのバーで酒を飲みながらビリヤードに興じて歌う「君の瞳に恋をして」。この曲は1967年フランキー・ヴァリによるヒット曲。
 音楽で言えばディア・ハンティングに行くときの、自然と鹿を映す映像の背景に流れる「カヴァティーナ」(イギリスの映画音楽家スタンリー・マイヤーズ作曲、ジョン・ウイリアムズのギター)。そしてスティーブン(ジョン・サベージ)の結婚式で流れるロシア正教会の聖歌や「カチューシャ」。最後のニック(クリストファー・ウォ―ケン)の葬式の後歌われる「ゴッド・ブレス・アメリカ」。
 この映画ではマイケル(ロバート・デニーロ)のヒーローぶりやスタンリー(ジョン・カザール)のダメぶりが印象に残りますが、ニック役のクリストファー・ウォ―ケンの美しさと繊細さが際立つような気がします。この演技でアカデミー助演男優賞をもらっていますし。実はこの映画当時デニーロもクリスも34歳くらいになっていました。見た目は20代後半でしょうか。このクリスは前の年の『アニー・ホール』ではアニー(ダイアン・キートン)の弟役でちょっとだけ出ていました。僕が好きなのは1983年の『デッド・ゾーン』。スティーブン・キング原作のこの映画では交通事故で超能力を持つようになってしまった青年(もう40歳近くなっていたのですが、まだ青年の雰囲気でした)の苦悩をやはり上手く演じていましたね。しかしその後の『007美しき獲物たち』、『ロンリー・ブラッド』あたりから不気味な犯罪者の役が多くなっていったような気がします。
 「君の瞳に恋をして」はいろんな歌手がカバーしていますが、僕は例によってローリン・ヒルのバージョンが好きです。
 http://www.youtube.com/watch?v=Ai2VnZc1ZnY