監督兼俳優

 これは『憎しみ』のマシュー・カソビッツと『ゴーストライター』のロマン・ポランスキーの連想から。
 ヒッチコックのようなカメオ出演はこれに当たりません。またイーストウッドやレッドフォードのような俳優兼監督も。
 監督がメインで、時々プロ並みな演技を披露するのはのイエジー・スコリモフスキーニキータ・ミハルコフのように東欧勢が多いでしょうか。、『早春』(1967年)の監督で印象的なイエジー・スコリモフスキーは『イースタン・プロミス』(2007)では、主人公の頑固な叔父を演じていました。また17年ぶりに撮ったという2008年の『アンナと過ごした4日間』では、『早春』での少年が中年に変わって異性へのかなわぬ愛をストーカー的に貫く物語が共通していて興味深い。
 アメリカではジョン・ヒューストンが代表的。それとマーク・ライデルも。『女狐』(1967、ロレンス原作)、『華麗なる週末』(1969、フォークナー原作)、『黄昏 』 (1981)の監督であるマーク・ライデルは『ロング・グッドバイ』 (1973)、『さよなら、さよならハリウッド 』 (2002)にも出演している俳優出身の監督です。
 でこの項目の真打は、ジョン・ヒューストン。『マルタの鷹』(1941) 『アフリカの女王』 (1951)、『白鯨』(1956)、『荒馬と女』 (1961)、『ザ・デッド/「ダブリン市民」より』 (1987)の監督は、『マイラ』 (1970)、『チャイナタウン』(1974)、『風とライオン』 (1975)に出演しています。特に『チャイナタウン』での娘に子を産ませる悪辣な実業家ノア・クロスの演技はアカデミー賞ものでしたね。ジョン・ヒューストンの監督作を見ると意外に文学作品の原作が多く、遺作のジョイス原作は言うまでもなく、フラナリー・オコナーの『賢い血』(1980)も含めて、スティーヴン・クレインの『勇者の赤いバッジ』(1951)、メルヴィルアーサー・ミラーテネシー・ウイリアムズ、カーソン・マッカラーズキプリング、マルカム・ローリーなど。
 また『チャイナタウン』の監督のロマン・ポランスキーも同作でギャング役で、また1967年の監督作『吸血鬼』にも出演しています。『タクシー・ドライバー』(1977)のマーティン・スコセッジは、同作で変なタクシーの客や、『ラウンド・ミッドナイト』(1986)、『クイズ・ショー』(1994、ロバート・レッドフォード監督)にも出演。
 写真は『チャイナタウン』のジェイク・ゲティス(J.ニコルソン)とノア・クロス。