The Ghost、またしても亡霊

 ロマン・ポランスキーの新作『ゴースト・ライター』の特集を『キネマ旬報』(9月上旬号)で読む。イーストウッド作品についてと同様、小林信彦×芝山幹郎の対談が面白い。
 原作は脚本も担当しているロバート・ハリス。原作の題名はThe Ghostだが、映画はThe Ghost Writer。翻訳は2009年に講談社文庫から出ています。主人公はその役割通り、The Ghost( Writer)とされて名前もない。ゴースト・ライターとしてそこそこの実績を持つ主人公がイギリスの元首相の回顧録執筆のために、不審死を遂げた前任者に代わって雇われる。インタビューと執筆の場所はアメリカ東部ケープコッド(鱈岬)のハイアニス港からフェリーで1時間のところにあるマーサズ・ヴィンヤード島。ケネディ家の別荘があったり、オバマ大統領が休暇を過ごしたりするこの場所も重要です。
ピーター・ブロスナン演じる元首相アダム・ラングが戦争犯罪(イギリス国籍の容疑者がCIAから拷問を含む尋問を受ける事を認めた)で国際法廷で裁かれる事になり、アメリカはその裁判を認めない数少ない国の一つであるという事。アダムが実はCIAの手先で会った事。さらに実はルースが先にCIAに勧誘され、アダムを巻き込んだ事などが明かされる。この辺りネタバレですが、原作の最後では、ゴースト自身が抹殺された(本当にゴーストになる?!)事も暗示されます。
 アダム・ラングは当然ながら、イラク戦争に加担したトニー・ブレア前首相を連想させ、またアダムが国際法廷を認めるイギリスにもどれないと言う設定は、ポランスキー自身の国を一旦出ると帰国できないと言う不条理を連想させて興味深い。
 写真は元首相夫人ルース・ラングを演じるオリヴィア・ウィリアムズと、隠れCIAのハーバード大学教授ポール・エメットを演じるティム・ウィルキンソン。ゴースト・ライターを演じるイアン・マクレガーとブロスナンの写真を避けて?探しているうちにたまたま見つけた写真ですが、この二人が結局キーになる様です。オリヴィア・ウィリアムズはグレタ・スカッキ(イギリス人とイタリア人の混血の女優)似の、イギリスでしか出てこないタイプの女優ですね。