孤児の系譜

 コジンスキーの「チャンス」も孤児でしたが、コジンスキー本人も孤児のような生涯を送った作家でした。第2次大戦中は亡命ユダヤ人の両親と分かれてポーランドで浮浪児として生き、1957年アメリカに亡命した後も、注目された65年の『異端の鳥』でも孤児的なというか追放者の物語でしたね。またアメリカの文壇(日本的なものとはずいぶんと違うようですが)においても、盗作の噂もあった異端の作家で、1991年ニューヨークで自殺をしてしまいます。
 さて「孤児の系譜」としたのは、今研究中(執筆中とは言えないので)の『越境』(C・マッカーシー)における主人公ビリーも孤児的なキャラクターです。ちゃんと両親はいるのですが、自ら家を出て放浪の旅を続けます。そういう意味では、自己追放者というか、主体的かつ選択的孤児と言え、何故そうしたかという理由を作品分析ではする必要があります。そしてその回答はまだこれから・・・
 この『越境』とメルヴィルのイシュメル(『白鯨』)の類似性を翻訳者(黒原敏行さん)は指摘していますが、その『白鯨』の発表の司会を引き受けざるを得なくなって、困りつつも関連性に興味を抱く、今日この頃?です。