60年代のイギリスの俳優たち

 マイケル・ケインは1964年の『ズールー戦争』と1966年の『アルフィー』で芽を出すが、1933年生まれの彼にとっては20代前半から俳優修行をはじめて30にしてやっとつかんだ栄光?だった。20代後半はロンドンのアパートで6つ年下のテレンス・スタンプと家賃を折半していたらしい。
 『ズールー戦争』では『ナバロンの要塞』(1961)ですでに有名になっていたスタンリー・ベーカー(1928年生まれ)と共演する。このスタンリー・ベーカーは60そこそこでがんで亡くなるが、なんとジェームズ・ボンドをオファーされていた。またテレビの『セイント』(僕も見た記憶がありますが)で有名になっていたロジャー・ムーア(1927年生まれ)からも励まされる。
 69年にはピーター・オトール(1932年生まれ)が『アラビアのロレンス』でスターになり、マイケル・ケインはオトールの演じていた舞台を引き継ぎ、テレンス・スタンプと共演する。スタンプは65年の『コレクター』で世に出るが、62年に主演した『奴隷船』の原題はBilly Bud、つまりメルヴィルの原作です。
アルバート・フィーニー(1936年生まれ)は『土曜の夜と日曜の朝』(1960)と『華麗なる冒険』(1963)。63年にはリチャード・ハリスが『孤独の報酬』。トム・コートニー(1937年生まれ)は『長距離ランナーの孤独』(1962)。ここでの3作は50年代の「怒れる若者たち」を描いた演劇や小説の影響が色濃く残っている。
 60年代の終わりはアラン・ベイツ(1934年生まれ)とオリバー・リード(1938年生まれ)の裸のレスリングが話題?となった『恋する女たち』(1969)。そして1943年生まれのマルカム・マクダウエルの『If・・』(1968)。ここでは1930年代以前の俳優に焦点を絞っているが、デビッド・ヘミングス(1941年生まれ)のメジャー・デビューはアントニオーニの『欲望』(1966)。
 『欲望』では端役で、ジェーン・バーキンも出ていました。僕は自分のHPの映画の頁で"Brit Boys of 60s"という小さなセクションを作るくらい、けっこうイギリスの俳優が好きです。アメリカにはない深み、渋み、屈折、屈託が感じられるからでしょうか。そんな訳で学会のたびの途中なのに、またはそのせいか、長くなってしまいました。