西部劇というジャンル

 昨日の午後、True Gritを見る。恥ずかしながら西部劇が好きなのは銃によるドンパチが好きな幼児性(それも男子の)と広大な自然の風景が好きなのだろうと少しだけ自己分析してみました。
 『トゥルー・グリット』はいい意味で西部劇と言うジャンルに個性的なコーエン兄弟が呑み込まれたような作品に仕上がっていました。つまりいくつかのショットを除けばあまり顕著なコーエン兄弟の印が見当たらない。しかし西部劇ファンとしては、十分満足のいく作品でした。
 まず主役の14歳の少女マティ・ロスを演じているヘイリー・ステインフェルドがいいですね。彼女のこの役以外の画像を見ると普通のヤンキー娘(古いでしょうか?)ですが、西部劇の衣装を着て、しかも冒頭の商人との交渉におけるセリフを聞くとキャスティングの妙と言うか、オーディションの結果、彼女しかいなかったというのが納得できます。その風貌も、典型的な白人の少女ではなく、どこか黒人か他の人種も血筋の遠いところで入っているような印象を受けます。
 酔いどれ保安官ルースター・コグバーンを演じるジェフ・ブリッジズはある種のタイプ・キャスティングというか、柄で演じていて悪くない。テキサス・レインジャーのルビーフを演じるマット・デイモンはもう少し複雑なキャラクターで、最初は高額の懸賞金を目的とするきざなガンマンだけれど、次第にマティのけなげな気持ちと勇気を認めるようになる。
 仇を取った25年後、蛇にかまれて片腕を失ったマティが登場する最後のシーンは原作でも重要で、『勇気ある追跡』ではなかったものです。でも25年後の40歳のマティをヘイリー・ステインフェルドの面影を宿した女優が演じるのは難しいようで、まったく似ても似つかない女優が演じていました。でも1903年にワイルド・ウエスト・ショーを演じているルースター・コグバーンの元仲間たちを「クズ」と言い捨てて去って行く、マティは「トゥルー・グリット」(真の勇気)を持っていた前世紀の西部を懐かしんでもいるようだ。最後にロス家の横に自分で作ったコグバーンの墓から歩み去るマティの後ろ姿はアンドリュー・ワイエスの絵のようにセピア色でノスタルジックでした。