Everything Must Change

 これも連想です。『文学部がなくなる日』という新書に関する書評を読んで購入。一読してあまり感心しませんでした。僕は以前から何か組織でも事象でも、生成・発展の次は衰退もしくは消滅するという不可避の過程をたどるというある種ニヒリスティックな、でも本当はリアリスティックな思いを持ち続けています。人間を含めて動物・植物、生物一般についても同様ですよね。
 文学部と言えば、その始まりであるイギリスの英文学部だってそんなに古い歴史を持っている訳ではない。今あるものがずっとあり続けると僕たちは思いがちです。また今あるものがずっとあったのだという錯覚も。例えば「児童」という概念だって、19世紀後半くらいからの100数十年です。それまでは児童憲章なんてとんでもない、重要な労働人口だったわけです。以前このブログで、10歳くらいの少年が慣れた様子でたばこを吸っている写真を紹介しましたが、それは新聞売りの少年の仕事の後の一服だった訳です。
 そんな風に考える時に頭の隅をよぎるメロディーが僕の場合はEverything Must Change。作者のBernard Ighnerはそれほど知られていないけれど、カバーしているミュージシャンはたくさんいます。でも僕が一番に押すのはニーナ・シモン。アルバム『ボルティモア』に収録されているこの曲はとても素晴らしい。例によってクラシカルな悠々迫らざる本人のピアノにのせて、「変わらないものはない、変わらない人もいない、同じままでいる人なんていない・・・」と低く、ゆっくりと人生の定理を語ります。その自信に満ちた、しかし深い諦めをも湛えた歌声に納得、そして脱帽。
 http://www.youtube.com/watch?v=5yU9WHTWzE0