懐かい図書館

BSで『フィラデルフィア』(1993)をやっていました。ジョナサン・デミ監督のこの作品は、『ロッキー』(1976)、『大逆転』(1983)『シックス・センス』(1999)とならんで、フィラデルフィアを見るにはいい映画です。ほかには『フィラデルフィア物語』(1940)、『刑事ジョン・ブック 目撃者』(1983)などでしょうか。
 『フィラデルフィア』はエイズホモセクシュアル、弁護士事務所、法廷、人種問題、家族など様々な視点から見る事ができて授業で使うにもいい映画です。
 さて何度も見ていますが、懐かしかったのはエイズで法律事務所を首になったアンドリュー・ベケットトム・ハンクス)が法例などの勉強をしている場所がペンシルバニア大学のFisher Fine Arts Library だからです。Frank Furnessという建築家が設計した図書館は元は本館だったのが、ある時期美術研究大学院の図書館になったそうです。ペン大には15以上もの図書館があり、僕はAnnenburgとVan Peltという図書館を主として使っていました。確かVan Peltにcarrelという書棚の端っこに机と椅子だけのスペースをもらった記憶があります。このキャレルはcubicleとかstallとも呼ばれるようです。オフィスではパーティションで三方を仕切った個人のスペースをcubicleと言っていますよね。今読んでいる新聞記者が主人公のミステリーでもよく出てきます。
 しかしFisher Fine Arts Library は素敵な外観だけでなく内部もよくて、時間によってはテーブル1つと椅子が4個くらいのアルコーブという引っ込んだ場所を占有できました。司書に映画に出てくるのはこの図書館ですよねと聞いたら、そうだよという返事が返ってきました。僕がいたのは1996年から97年にかけてでしたので、映画に出てくる市長も同じ人でした。
 この図書館での場面は映画の中でも重要でした。と言うのは、以前法廷で争った事のある黒人弁護士ジョン・ミラー(デンゼル・ワシントン)は、法律事務所を首になったベケットの弁護をしてもらいたいと頼みをゲイへの偏見もあって一度断ります。しかしベケットが司書の偏見にも関わらず病気を押して一人で勉強をしている姿を見て、ミラーが弁護を引き受ける事を決意するからです。見たことのある映画を再見する良さは、映画と言うテクストの細部にまで入り込めることでしょう。