編集者と書簡

 二日酔いの重い頭で朝刊を眺めていると、『朝日新聞』の道内版「北の文化」に見慣れた名前が出ていました。北海学園大学経営学部の石井耕氏が執筆している「編集者 石井立の仕事」です。石井さんのお父上は筑摩書房の編集者で、井伏鱒二太宰治武田泰淳、会田綱雄(以前このブログで紹介した詩人です)などの文学者と交流があったらしい。
 それもメールやファックスどころか、電話の普及もおぼつかない時代に手紙でのやり取りが多く、それが貴重な文学史・文化史的な資料資料として残っているのは、前項のブログと同様。
 ネットで検索してみると、石井立(たつ)さん(1923〜64年)は太宰治の晩年の代表作「人間失格」を担当し、最も信頼された人物だそうだ。よく知られているように太宰は1948年に東京・三鷹玉川上水に投身し、遺体で発見されたが、その場にも立ち合ったのが石井さんで、井伏鱒二の随筆「をんなごころ」によると、「僕が、太宰先生の遺骸を、川から担ぎ上げたのです」そうだ。
 病気のため40歳の若さで夭折した石井さんのご長男石井耕さんが北海学園大学の「学園論集」に「できるかぎりよき本 石井立の仕事と戦後の文学」を発表を昨年9月と12月に発表。教務センターの仕事にこの『学園論集』があるのに不明ながら未読でした。さっそく大学で探して読んでみよう。